■色覚とは
色覚とは、可視光線(400〜800 nm)の各波長に応じて起こる感覚をいいます。
網膜には、長波長(565 nm)、中波長(545 nm)、短波長(440 nm)付近の光に感度の高い視物質を持つ3種類の錐体(すいたい)が存在し、それぞれL-錐体(旧:赤錐体)、M-錐体(旧:緑錐体)、S-錐体(旧:青錐体)と呼ばれています。目に光が入るとこの錐体の視物質が応答し、その情報が網膜から視神経を伝わって大脳皮質の視覚中枢に運ばれ、色覚が起こるのです。
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■色覚異常の分類
色覚異常には、先天色覚異常と後天色覚異常があります。先天色覚異常は遺伝による錐体視物質の異常でX連鎖性遺伝(伴性劣性遺伝)をし、日本人での頻度は男性の約5%、女性の0.2%です。それ以外の原因、たとえば目や脳内の病気などによる色覚障害を後天色覚異常といいます。
先天色覚異常には程度によって1色覚(旧:全色盲)、2色覚(旧:色盲)、異常3色覚(旧:色弱)、問題となる錐体の種類によって1型色覚(L-錐体の異常)、2型色覚(M-錐体の異常)、3型色覚(S-錐体の異常)がありますが、1色覚や3型色覚は非常にまれで、通常、色覚異常といえば、2色覚や異常3色覚、1型色覚や2型色覚を指し、これらをあわせて先天赤緑色覚異常ともいっています。
■先天赤緑色覚異常の色の見え方
先天赤緑色覚異常では隣り合った色などが見分けにくいことがあります。見分けにくい色の組み合わせ例は図のとおりです。
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見るものが小さいときやちらっと見ただけのとき、暗いところなどで誤りやすく、注意深く見たときには間違えることが少ないため、どの色を誤りやすいか理解することが大切です。間違いやすさは色覚異常の種類や本人の自覚によって個人差があります。
なお、世間ではときに弱視と間違われることがありますが、先天色覚異常では視力は正常に保たれています。
■先天色覚異常の検査
仮性同色表(色覚検査表)には石原色覚検査表や標準色覚検査表(SPP-1)などがあり、健康診断の際などのスクリーニングに広く用いられていますが、これらの表のみでは、色覚異常があるらしいことは判定できても、確定診断まではできません。診断を確定するためには、アノマロスコープという特殊な検査機器を用いなければなりませんが、この検査は熟練を要し、一般の眼科には備えてありません。色覚異常の程度判定にはパネルD-15が用いられ、生活上の支障や職業適性を大まかに判断するときに最も適した検査です。
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■小学校などでの対応
2003年度から、小学校での健康診断に義務づけられていた色覚検査が廃止され、現在は任意での検査のみとなっているため、今後は、検査を受けないまま色覚異常の事実を知らない色覚異常者が増加すると予測されます。しかし、教材などに見分けにくい色の組み合わせがみられ、また小学校低学年では色を使った学習が多いため、担任の先生との個別相談が必要になることもあります。子どもの色の見え方に疑問を感じたら、養護教諭や眼科学校医に相談することをお勧めします。
■進学と就職
現在では、進学時に色覚について問われることはほとんどなくなっています。
しかし、例えば、自衛隊、警察関係、航空、調理師専門学校など、ごく一部の学校では入学時に制限されることがあります。募集要項にはよく目を通してください。
就職時においても、厚生労働省は色覚異常者に対して根拠のない採用制限を行わないよう指導をしています。しかし、微妙な色の識別が必要な職種などでは就職できない場合があります。また、一般の企業でも、色覚異常に対する理解がまだ十分でなく、その対応にはかなりの混乱がみられます。これも募集要項にはよく目を通してください。
一方、就職し、勤務して初めて色覚異常のために就業に困難を生じるケースもみられます。どんな色が見えにくいかを自覚し、色の誤りをしないよう、対策を講じておくことがとても大切です。
■ご両親へ
我が子が生涯幸せであれと願い、子孫にわずかな弱点も伝えまいとするのは人間の本能です。しかし、人間にはさまざまな能力と数々の短所があります。また、遺伝が関与する疾患や障害は数多く、誰しも何らかの遺伝子異常を持っているものです。
色覚異常は場合により多少問題を生じることがあっても人生を脅かすほどではなく、他の能力や遺伝的障害に比べ損失はわずかです。また、遺伝というものは誰のせいでもありません。
一部に残る色覚異常を嫌う風習は知識の不足によるところが大きく、色覚異常の遺伝をめぐる問題は、社会全体が色覚異常の色の見え方を正しく理解すればほぼ解決します。社会のつまらない誤解に悩むことのない、もっと楽しむことができる世の中にしたいものです。
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