2012年6月3日日曜日

《故事・ことわざ・四字熟語》 辞典・「し」


尸位素餐
(しいそさん)

 高い位にあるだけで職責を果たさず、高禄をはんでいること。また、そういう人。『漢書・朱雲伝』に「今の朝廷の大臣、上は主をただすことあたわず、下は以て民を益する亡く、皆尸位素餐なり」とあるのに基づく。「尸位」は高位にありながら責任を果たさないこと、「素餐」は空しく食うことを言う。

慈烏反哺
(じうはんぽ)

 父母が年老いた後、その子が父母を養って恩に報いること。

四海兄弟
(しかいけいてい)

 天下の人々は皆兄弟のように親しく交わるべきであるということ。『論語・顔淵』に「君子は敬して失うこと無く、人と恭しくして礼有らば、四海の内、皆兄弟なり。君子何ぞ兄弟無きをうれえんや」とあるのに基づく。子夏のことば。「四海」は四方の海、転じて天下、全世界。

同意語: 「四海皆兄弟」、「四海同胞」

志学
(しがく)

 十五歳の別称。『論語・為政』にある孔子のことば「吾十有五にして学に志す」から。

四角な座敷を丸く掃く
(しかくなざしきをまるくはく)

 座敷は四角いのに、真ん中だけを丸く掃いて、掃除を済ませる。物事をいい加減にするたとえ。

自画自賛
(じがじさん)

 自分で自分のことをほめること。自分の描いた絵に自分で「賛(褒め称える文章)」を書くことから言う。

自家撞着
(じかどうちゃく)

 言動が前後で食い違うこと。「撞着」は突き当たる意から、矛盾の意に転じた。

同意語: 「自己矛盾」、「撞着」、「矛盾」、「矛盾撞着」

自家薬籠
(じかやくろう)

 ⇒「自家薬籠中の物」

自家薬籠中の物
(じかやくろうちゅうのもの)

 いつでも自分の思いのままに使いこなせるもののこと。自分の薬箱に入れた薬はいつでも自在に使えることから言う。

同意語: 「自家薬籠」、「薬籠中の物」

鹿を逐う者は山を見ず
(しかをおうものはやまをみず)

 利益を追うことに夢中になっている人は周囲の情勢に気づかず道理を見失ってしまうということ。鹿を捕らえることに夢中になって山全体を見ず、その深さを忘れてしまうことから言う。

同意語: 「漁師山を見ず」、「鹿を追う猟師は山を見ず」
類語: 「戦う者はその身を忘るるものなり」、「戦う雀人を恐れず」

鹿を指して馬となす
(しかをさしてうまとなす)

 間違いをどこまでも押し通すこと。しんの始皇帝の死後、実権を握った趙高ちょうこうは群臣が自分に従順かどうかを試してみようと考えて、馬だと偽ってしかを二世皇帝に献じた。群臣の中で趙高におもねる者は沈黙したり、「馬だ」と言ったりしたが、「鹿だ」と言った者は皆殺しにされたという。『史記・秦始皇本紀』に見える故事に基づく。

同意語: 「鹿を馬」
類語: 「鷺を烏と言う」、「這っても黒豆」

只管打座
(しかんだざ)

 禅宗で、ただひたすらに座禅することをいう。

色即是空
(しきそくぜくう)

 この世に存在する一切のものは、むなしいものであるということ。「しき」は形に現れた一切のもの。形は仮の姿(現象)であって、永劫不変の実体ではないとする仏教の考え方。「般若心経」に「しきくうに異ならず、空は色に異ならず。色は即ちこれ空にして、空は即ちこれ色なり」とあるのに基づく。

四苦八苦
(しくはっく)

 この世に存在するありとある苦しみ。「八苦」は、人生における最も基本的な苦しみである「四苦」(生・老・病・死)に、愛別離苦あいべつりく怨憎会苦おんぞうえく求不得苦ぐふとくく(求めて得られぬ苦しみ)・五陰盛苦ごおんじょうく(ものに執着する苦しみ)の四つを加えたもの。

自業自得
(じごうじとく)

 自分がなした悪事のために、自分の身にその報いを受けること。自分がしたことの報いは、必ず自分自身が受けるという教え。

地獄極楽はこの世にあり
(じごくごくらくはこのよにあり)

 善行や悪行の報いは、死後に行くとされる地獄や極楽を待たずとも、この世ではっきりと現れるということ。

地獄で仏に会ったよう
(じごくでほとけにあったよう)

 苦難の最中に、思わぬ助けを得るたとえ。恐ろしい地獄で、慈悲深い仏に会ったような嬉しさのこと。

同意語: 「地獄で地蔵」、「地獄で仏」、「地獄の仏」
類語: 「闇夜に提灯」、「闇夜の提灯」

地獄の釜の蓋が開く
(じごくのかまのふたがあく)

 正月と盆の十六日には誰でも仕事を休もうではないかということ。この日は地獄の閻魔の庁でさえ亡者を責め苦しめる仕事を休むのだから、我々も休もうといった気持ちで言う。釜茹での仕置きは蓋を閉じて行うことから、「釜の蓋が開く」はその仕事をしない意である。

地獄の沙汰も金次第
(じごくのさたもかねしだい)

 地獄の裁きでさえ金がものを言うくらいだから、ましてこの世は金の力でどうにでもなるということ。「沙汰」は評定ひょうじょう、裁判の意。

類語: 「阿弥陀も銭で光る」、「金が全て」、「金が物を言う」、「金で開かぬ扉はない」、「金の力で雌馬も歩く」、「人間万事金の世の中」、「成るも成らぬも金次第」、「銭ある時は鬼をも使う」、「地獄の沙汰も銭がする」、「仏の光より金の光」、「冥土の道も金次第」

指呼の間
(しこのかん)

 指さして呼べば答えるほどの近い距離のこと。「指呼」は指して呼ぶ意。

士魂商才
(しこんしょうさい)

 武士の精神と商人の才能を兼ね備えていること。実業家のモラルとして言われる語。

屍山血河
(しざんけつが)

 死体が山のように積み重なり、血が河のように流れること。激しい戦闘のたとえ。

肉食った報い
(ししくったむくい)

 悪いことをしたために受ける当然の報いのこと。「しし」は獣、特にいのしし鹿かのしし肉の意。仏教では獣肉を食べることを禁じていたことから言う。禁を犯していい思いをした以上は報いがあるのは当然だといった意味合いで使う。

獅子身中の虫
(しししんちゅうのむし)

 味方でありながら内部から災いをもたらす者や恩を仇で返す者。本来は、獅子の体に寄生して、ついには獅子を死に至らしめる虫の意から、仏教を害する仏弟子のたとえ。『梵網経』に「獅子身中の虫、自ら獅子の肉を食らい、余外の虫にあらざるが如し」とあるのに基づく。

事実は小説よりも奇なり
(じじつはしょうせつよりもきなり)

 実生活で起こる事柄は、巧みに仕組まれた小説よりも不思議で面白いものだ。イギリスの詩人バイロンの『ドン・ジュアン』に見える。

死して後已む
(ししてのちやむ)

 命のある限り努力し続けることを言う。死んで初めて務めがおしまいになるの意。『論語・泰伯』に「仁以て己が任となす、また重からずや。死して後已む、亦遠からずや」とあるのに基づく。曾子そうしのことば。

同意語: 「斃れて後已む」

獅子の子落し
(ししのこおとし)

 自分の子に苦しい試練を課して立派な人間に育てようとすることを言う。獅子は自分の子を深い谷に投げ込み、岩角に取りつきそこから這い上がってくるものだけを育てるという言い伝えから言う。

同意語: 「獅子は子を谷へ落してそのせいを見る」
類語: 「可愛い子には旅をさせよ」、「親の甘いは子に毒薬」、「鞭を惜しむと子を駄目にする」

獅子奮迅
(ししふんじん)

 獅子が奮い立って激しく進む意から、物事に対処する際の意気込み、勢いがすさまじく強いことのたとえ。

四十がったり
(しじゅうがったり)

 健康な人でも、四十歳を過ぎると急に体力が衰えることを言う。「がったり」は、がくんと衰える意。

四十にして惑わず
(しじゅうにしてまどわず)

 四十に達すると心が迷うことがなく、自分の生き方に確信を持つようになったということ。『論語・為政』にある孔子のことば「四十而不惑」から言い、そこから「不惑ふわく」を四十歳の称とする。

同意語: 「不惑」
類語: 「四十にして心を動かさず」、「四十は分別盛り」

自縄自縛
(じじょうじばく)

 自分の縄で自分を縛ること。自分自身の心がけや行動によって、動きがとれなくなり、苦しむことのたとえ。

爾汝の交わり
(じじょのまじわり)

 互いに「お前」「貴様」と呼び合うような親しい交わりのこと。「爾」も「汝」も「なんじ」と読み、お前、貴様の意。

死屍を鞭打つ
(ししをむちうつ)

 死んだ人の言行を非難すること。死体を鞭打って生前の恨みを晴らすことから言う。『史記・伍子胥ごししょ伝』に「伍子胥……の平王の墓を掘り、そのいだしてこれをむちうつこと三百」とある故事に基づく。

同意語: 「死屍に鞭打つ」、「死者に鞭打つ」

地震雷火事親父
(じしんかみなりかじおやじ)

 世の中で怖いものを順に並べて、調子よく言ったもの。

沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり
(しずむせあればうかぶせあり)

 悪いことがあった後には、よいことがあるということ。人生には色々なことがあるといった意味合いで使う。

同意語: 「沈めば浮かぶ」
類語: 「禍福かふくあざなえる縄のごとし」

死生命あり
(しせいめいあり)

 人の生き死には天命で決まっており、人の力ではどうすることもできないということ。

死せる孔明生ける仲達を走らす
(しせるこうめいいけるちゅうたつをはしらす)

 優れた人物は死後もなお威力があって、生きている人をも恐れさせるということ。三国時代、蜀の諸葛孔明は魏の司馬仲達と五丈原ごじょうげんで対陣中に病死し、部下の楊儀ようぎらは退却を開始した。これを聞き知った仲達は早速に追撃を開始したが、公明の部下・姜維きょういらはその遺策により、旗の向きを変え、太鼓を鳴らして反撃の姿勢を見せた。そのため仲達は孔明の死は謀略ではないかとの不審を抱き、追撃するのをやめて退却したという。『蜀志・諸葛亮伝』の注に見える故事。

同意語: 「死せる諸葛生ける仲達を走らす」

自然淘汰
(しぜんとうた)

 生物は周囲の状態に適したもののみが生存して子孫を残し、そうでないものは子孫を残さずに滅びるということ。適切なものだけが自然に選択されること。

志操堅固
(しそうけんご)

 物事をしようという意志が固いこと。環境などに左右されず、志を守って変えないこと。

士族の商法
(しぞくのしょうほう)

 商売を始めてみたものの、慣れないうえにが高くて失敗することを言う。明治維新後、武士が士族となって商売を始めたが慣れないために多く失敗したことから言う。

同意語: 「武士の商法」

児孫のために美田を買わず
(じそんのためにびでんをかわず)

 子孫のために財産を残してもためにならないから、財産を殖やすようなことはしないということ。西郷隆盛の詩「偶感」に「我が家の遺法人知るや否や、児孫のために美田を買わず」とあるのに基づく。

同意語: 「児孫のために美田を残さず」

時代錯誤
(じだいさくご)


羽ヒトデの色は何ですか

 時代おくれ。時代の流れに合わない物事の考え方。特に時代に遅れた古い考えや行動を言う。

親しき仲にも礼儀あり
(したしきなかにもれいぎあり)

 親しみが過ぎてなれなれしくするのは、かえって不和のもとであるということ。親しい仲でも礼儀を守ることの大切さを説く。

同意語: 「近しき仲にも礼儀あり」、「思う仲には垣をせよ」、「親しき仲にも垣をせよ」、「親しき仲に礼儀あり」
類語: 「近しき中にも垣を結え」

滴り積もりて淵となる
(したたりつもりてふちとなる)

 一滴一滴のしずくも集まれば深い淵となる。一つひとつは僅かなものであっても、数多く集まれば大きな存在となるということ。

類語: 「塵も積もれば山となる」

舌の先で丸め込む
(したのさきでまるめこむ)

 うまく言いくるめてだます。舌先三寸。

舌は禍の根
(したはわざわいのね)

 ⇒「口は禍の門」

舌を出す
(したをだす)

 陰で相手をばかにする。また、決まり悪さを紛らわすようすを言う。

舌を鳴らす
(したをならす)

 舌を上あごにつけて音を出す動作を言い、軽蔑・不満の意(舌打ち)や美味の意を表すほか、犬・猫などを呼ぶ合図ともする。

舌を振るう
(したをふるう)

 さかんにしゃべる。

舌を巻く
(したをまく)

 ひどく驚いたり感心したりする。

四知
(しち)

 ⇒「天知る神知る我知る子知る」

七十にして矩を踰えず
(しちじゅうにしてのりをこえず)

 ⇒「心の欲する所に従えども矩を踰えず」

七転八起
(しちてんはっき)

 何度倒されても、その度に屈せず起き上がること。「七転び八起き」が四字熟語に転じたもの。

同意語: 「七転び八起き」

七転八倒
(しちてんばっとう)

 何度も何度も倒れるように、苦痛のために激しく苦しみ悶えるさま。

七歩の才
(しちほのさい)

 詩文を作る才能に優れていて、詩作の早いことを言う。七歩歩くほどの短い間に詩を作ってしまう才能の意。三国時代、魏の曹植そうちは兄の曹丕そうひ(魏の文帝)に疎まれ不遇であった。七歩歩む間に詩を作らなければ罰する、と兄に命じられた弟は、まさに七歩の間に、豆殻を兄に豆を弟に見立てて、豆をその同じ豆の殻を燃料にして煮るという寓意によって、兄弟の不和を嘆く詩を作って兄に献じたという。『世説新語・文学』に見える故事。この話はまた、「豆を煮るにその豆殻を焚く」の故事を生んだ。

同意語: 「七歩の詩」

死中に活を求める
(しちゅうにかつをもとめる)

 絶望的状況のなかにあっても、なおそこから抜け出す道を見つけること。『後漢書・公孫述伝』に「男児まさに死中に生を求むべし。坐して窮すべけんや」とあるのによる。公孫述こうそんじゅつの武将・延岑えんしんのことば。

同意語: 「死中に生を求める」

四通八達
(しつうはったつ)

 往来の激しい賑やかな所をさす。いろいろな方面に道が通じていること。

実事求是
(じつじきゅうぜ)

 事実に基づいて、物事の真相・真理を求めたずねる。清朝の学風。

質実剛健
(しつじつごうけん)

 飾り気がなく真面目であり、かつ心身ともに健康で強くたくましい様子。

叱咤激励
(しったげきれい)

 激しく強い言葉や大声で人を励まして奮い立たせること。

七珍万宝
(しっちんまんぽう)

 様々な種類の宝物のこと。

失敗は成功の母
(しっぱいはせいこうのはは)

 失敗はよく反省してやり直せば、かえって成功を生み出すもとになるということ。

同意語: 「失敗は成功のもと」
類語: 「失敗が成功を教える」

疾風迅雷
(しっぷうじんらい)

 非常に素早く激しいこと。はやい風と激しい雷の意から言う。『礼記・玉藻』に「し疾風迅雷甚雨じんう有らば、即ち必ず変ず」とあるのによる。

疾風に勁草を知る
(しっぷうにけいそうをしる)

 速く激しい風が吹くと、初めて強い草が見分けられる。苦境に立ったとき、初めてその人の節操の堅さや意志の強さが分かるということ。「疾風」は速く吹く風。「勁草けいそう」は強い草の意。

櫛風沐雨
(しっぷうもくう)

 風雨にさらされて、休みなく幾多の艱難辛苦を重ねること。風にくしけずり、雨にかみあらうの意から言う。『荘子・天下』に引かれた墨子ぼくしのことば、「甚雨じんうに沐い、疾風に櫛る」に基づく。治水事業に奔走努力した禹王うおうを言ったもの。

同意語: 「櫛雨」、「沐雨櫛風」

十遍読むより一遍写せ
(じっぺんよむよりいっぺんうつせ)

 書物の内容は、何遍も読むよりは一回書き写した方がよく理解できるということ。

同意語: 「十読は一写に如かず」

湿を悪んで下きに居る
(しつをにくんでひくきにおる)

 湿気の多いところを嫌がりながら、現実には湿気の多い低い場所にいる。悪いことだとは分かっているのに、なお悪いことをし続けているたとえ。

死人に口無し
(しにんにくちなし)

 死んだ人は物を言うことができないということ。死人に無実の罪を着せるときや、死人を証人とすることができないときなどに言う。

死ぬ者貧乏
(しぬものびんぼう)

 死ぬ者は、貧乏くじを引いたようなものである。生きてさえいれば、将来どんな良いことに巡り合えるかもしれないが、死んでしまえばそれきりだということ。

類語: 「死んで花実が咲くものか」

死は或いは泰山より重く或いは鴻毛より軽し
(しはあるいはたいざんよりおもくあるいはこうもうよりかるし)

 人は命を重んじて犬死にしないようにすべき場合もあり、また命を軽んじて潔く死なねばならない場合もあるということ。いずれにしても義のために命を捨てるべきであることを説く。「泰山」は中国山東省にある名山の名。「鴻毛」はオオトリの羽で、極めて軽いもののたとえ。

士は己れを知る者の為に死す
(しはおのれをしるもののためにしす)

 男子は、自分の価値を認めて優遇してくれる者のためには命を投げ出して尽くすということ。『史記・刺客・予譲伝』に「士は己れを知る者の為に死し、女は己れをよろこぶ者の為にかたちづくる」とある。春秋時代の末、ちょう智伯ちはくに国士として遇された予譲が、智伯の仇を討とうと復讐の決意を述べたときのことば。

同意語: 「知己」

死馬の骨を買う
(しばのほねをかう)

 優れた者を求めるために、ひとまずつまらない者を優遇しておくということ。また、人材を集めるのに熱心であること。千金の名馬を買ってくると約束した宦官が、死んだ名馬の首を五百金で買って帰った。王が「死んだ馬に五百金も払うとは何事か」と怒ったところ、宦官は「死んだ馬にさえ五百金払うというのなら、生きた馬ならなおさら高く買うと世間は思い、王は馬の値打ちが分かるという評判が立って、名馬は自然に集まるでしょう」と答えたという。『戦国策・燕』に見える故事に基づく。

同意語: 「死馬の骨を五百金に買う」
類語: 「隗より始めよ」

四百四病の外
(しひゃくしびょうのほか)

 恋の病のこと。「四百四病しひゃくしびょう」は、人間が患うあらゆる病を言う。恋わずらいだけは、その範疇から外れているという意味。

四分五裂
(しぶんごれつ)

 ちりぢりばらばらに分裂して秩序・統一を失い、乱れている様子。

自暴自棄
(じぼうじき)

 やけになって理性をなくし、自分で自分の身を持ちくずすこと。やけのやんぱち。

自慢は知恵の行き止まり
(じまんはちえのゆきどまり)

 自慢をするようになったら、その人の知恵や進歩は止まってしまう。人間、自慢をするようになるとおしまいだということ。

四面楚歌
(しめんそか)

 四方を敵に囲まれて孤立無援であること。漢の劉邦りゅうほうに追い詰められた項羽こううは、少数の手勢を引き連れて垓下がいかの町に立てこもった。劉邦が軍中で楚の歌を歌わせたところ、包囲する漢軍の中から項羽の故郷の楚の歌が聞こえてくるので、項羽は「漢軍が楚の全土を征服してしまったのか。何と楚人の多いことか」と大いに驚き嘆いたという。『史記・項羽本紀』に見える故事。

駟も舌に及ばず
(しもしたにおよばず)

 失言はとりかえしがつかないということ。(四頭立ての馬車)で追いかけても追いつかないの意で、ことばは軽々しく発するものではないと戒める。「駟」は速いもののたとえ。孔子の弟子の子貢しこうえい棘子成きょくしせいruby:の発言を評して言った、『論語・顔淵』にあることば。

同意語: 「駟馬しばも追うあたわず」
類語: 「口から出れば世間」

霜を履みて堅氷至る
(しもをふみてけんぴょういたる)

 物事の徴候があると、まもなく大事が来るということ。霜を踏んで歩く季節(旧暦九月)が来たら、やがて氷が堅く張る冬(十一月)が来ることから言い、徴候を見たらしかるべく備えよといった意味合いで使う。『易経・坤』にある。

釈迦に経
(しゃかにきょう)

 ⇒「釈迦に説法」

釈迦に説法
(しゃかにせっぽう)

 その道を極めた人に教えを説くことの愚かさを言う。

同意語: 「釈迦に経」、「釈迦に説法孔子に悟道ごどう
類語: 「猿に木登り」、「河童に水練」、「孔子に論語」

杓子定規
(しゃくしじょうぎ)

 すべてに一つの基準や感覚を当てはめて判断・処理しようとする応用や融通の利かないやり方。態度。

杓子は耳掻きの代わりにならず
(しゃくしはみみかきのかわりにならず)

 杓子は耳の穴のように小さな場所では使えない。形が似ていても、大きい物が必ずしも小さい物の代用になるとは限らないたとえ。

同意語: 「杓子は耳掻きにならず」
反意語: 「大は小を兼ねる」

弱肉強食
(じゃくにくきょうしょく)

 弱小なものが強大なものの犠牲になること。弱者の肉は強者の食べ物の意で、唐の韓愈かんゆ浮屠文暢師ふとぶんちょうしを送るの序」に「弱の肉は強の食なり」とあるのに基づく。

類語: 「大魚が小魚を食う」

寂滅為楽
(じゃくめついらく)

 生死を超越し、煩悩から解放されて初めて、真の安楽が得られるということ。

尺を枉げて尋を直くす
(しゃくをまげてじんをなおくす)

 大きなことを成し遂げるためには、小さなことを犠牲にしてもやむをえないということ。「尋」は中国で八尺の長さ。一尺を枉げても八尺をまっすぐにできればよいの意から言う。『孟子・滕文公上』にある。


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同意語: 「尺を枉げてひろぶ」、「寸を枉げて尺を伸ばす」
類語: 「小の虫を殺して大の虫を生かす」、「小異を捨てて大同につく」

洒洒落落
(しゃしゃらくらく)

 性格や態度、言動などがさっぱりしていて、こだわりのない様子。

社稷の臣
(しゃしょくのしん)

 国家の運命を左右する重要な臣下。国家の重臣。「社」は土地の神、「稷」は五穀の神。ともに国家の祭祀の重要な対象となったことから、「社稷」は国家の意味となった。

尺蠖の屈めるは伸びんがため
(しゃっかくのかがめるはのびんがため)

 尺取り虫が体を縮めるのは、次に伸びようとするためである。将来の飛躍を期するため、一時的に隠忍自重して力を蓄えることを言う。

蛇の道は蛇
(じゃのみちはへび)

 同類の者は、互いに同類の者がすることをよく知っているということ。ヘビの通った道は他のヘビもよく知っているの意から、秘密の部分にもよく通じているといった含みで使う。

同意語: 「蛇の道は蛇が知る」

蛇は寸にして人を呑む
(じゃはすんにしてひとをのむ)

 優れた人は幼少のときから常人とは違ったところがあるということ。蛇はわずか一寸ほどのものでも、人を呑むほどの気迫があるの意から言う。

同意語: 「蛇は一寸にしてその気あり」、「蛇は一寸にしてその気を得る」
類語: 「虎子こしは地に落ちて牛を食うの気あり」、「実の生る木は花から知れる」、「栴檀せんだんは双葉よりかんばし」、「竜は一寸にして昇天の気あり」

沙弥から長老にはなれぬ
(しゃみからちょうろうにはなれぬ)

 物事には順序、段階があって、一足飛びには出世できないたとえ。「沙弥しゃみ」は未熟な僧侶、「長老」は修行を積んだ高僧のこと。

類語: 「はなから和尚はいない」、「仏になるも沙弥をる」

舎を道傍に作れば三年にして成らず
(しゃをどうぼうにつくればさんねんにしてならず)

 道端に家屋を作ろうとして、道行く人に相談すると、それぞれが勝手なことを言うから、三年経っても完成しない。人の意見を聞いていたら、方針が決まらないたとえ。

類語: 「船頭多くして船山に上る」

縦横無尽
(じゅうおうむじん)

 自由自在でとらわれのないさま。勝手気ままにふるまうようす。

秀外恵中
(しゅうがいけいちゅう)

 外見が立派で頭脳も優秀である。容貌がよくて頭がよい。

衆寡敵せず
(しゅうかてきせず)

 少人数では多人数にかなわないということ。「衆寡」は多いことと少ないことの意。『三国志・魏志・張範伝』に基づく。

類語: 「寡は衆に敵せず」、「多勢に無勢」

習慣は第二の天性なり
(しゅうかんはだいにのてんせいなり)

 身についた習慣は、生まれつきの天性のように人の言動を強く支配する力を持つということ。古代ギリシャの哲学者ディオゲネスのことば。

類語: 「習い性と成る」、「習うより慣れよ」、「習慣は自然となる」、「習慣は自然のごとし」、「雀百まで踊り忘れず」

衆議一決
(しゅうぎいっけつ)

 おおぜいの議論、相談の結果、意見が一致し結論が出ること。

羞月閉花
(しゅうげつへいか)

 美しい容姿に対して月もはじらい、花も閉じてしまう意。容姿の美しい女性を形容する語。

自由自在
(じゆうじざい)

 何事も心のままにできること。また、思う存分に振る舞うようす。

周章狼狽
(しゅうしょうろうばい)

 うろたえ、あわてるの意。

衆人環視
(しゅうじんかんし)

 大勢の人々が周囲を取り巻いて見ていること。

修身斉家
(しゅうしんせいか)

 身の行いを正し、円満な家庭を築いてこそ仕事に打ち込める意。

修身斉家治国平天下
(しゅうしんせいかちこくへいてんか)

 まず自分の身を修めれば、家庭もととのい、国も治まり、ついには天下も平らかになるということ。『大学』に「いにしえの明徳を天下に明らかにせんと欲する者は、先ずその国を治む。その国を治めんと欲する者は、先ずその家を斉う。その家を斉えんと欲する者は、先ずその身を修む」とある。

秋霜烈日
(しゅうそうれつじつ)

 刑罰・権力などが厳しいこと。また、信念・意思などに威厳があること。秋の厳しい霜と夏の激しい太陽の光の意から言う。

縦塗横抹
(じゅうとおうまつ)

 縦横に書いたり消したりすること。書きなぐること。

姑の仇を嫁が討つ
(しゅうとめのあだをよめがうつ)

 姑にいびられた嫁が、後年自分の息子の嫁をいびることによってその恨みを晴らすということ。

秋波
(しゅうは)

 女が男の気を引くためにする色っぽい目つき。流し目、色目。秋の澄んだ水波すいはの意から美人の涼しい目もとの意に転じ、さらに流し目の意に転じたもの。

重箱の隅を楊枝でほじくる
(じゅうばこのすみをようじでほじくる)

 非常に細かいことにまで、こまごまと気を配って口うるさく言うこと。重箱の隅に残った物を楊枝でほじくりだして食べるの意から言う。

同意語: 「重箱の隅を楊枝でつつく」
反意語: 「重箱で味噌を擂る」、「重箱を粉木こぎで洗う」

秋風索莫
(しゅうふうさくばく)

 夏が過ぎて秋風が吹くと自然界が衰えを見せ、ものさみしい光景に様変わりすること。盛んだったものが衰えてものさみしくなるさま。

十目の見る所十指の指す所
(じゅうもくのみるところじっしのさすところ)

 世間の誰もがそうだと認めるところの意で、多くの人の批判や指摘は厳正であることを言う。十人が十人とも一致して認めるところの意。曾子そうしのことば。

柔能く剛を制す
(じゅうよくごうをせいす)

 柔弱な者が、かえって剛強な者に勝つということ。『三略』に「柔能く剛を制し、弱能く強を制す」とある。

同意語: 「柔剛に勝つ」、「柔弱じゅうじゃくは剛強に勝つ」
類語: 「高木は風に折らる」、「歯滅びて舌存す」、「柳に風折れなし」

雌雄を決す
(しゆうをけっす)

 勝負をして優劣を決めること。「雌」を弱いものの、「雄」を強いもののたとえとするところから言う。『史記・項羽本紀』に見える。

主客転倒
(しゅかくてんとう)

 主人と客が入れ替わったように、本来の立場・順序・軽重などが逆転すること。

樹下石上
(じゅかせきじょう)

 野山や道端に寝泊まりすることのたとえ。

熟読玩味
(じゅくどくがんみ)

 詩文や物事の意味・道理などをよく考え味わうこと。文章をていねいに読み、意味、内容を深く味わうこと。

熟慮断行
(じゅくりょだんこう)

 十分に時間をかけて考えた上で、思い切って実行すること。

守株
(しゅしゅ)

 ⇒「株を守りて兎をつ」

首鼠両端
(しゅそりょうたん)

 どちらにしようかと迷っているようすを言う。疑い深い鼠が、穴から頭を出して左右をうかがうようすから言うとも、「首鼠」は「進退」の意で前に出たり退いたりする意から言うともいう。『史記・魏其武案侯伝』などに見える。

類語: 「洞ヶ峠を決め込む」、「両端を持す」

酒池肉林
(しゅちにくりん)

 ぜいたくを極めた酒宴のこと。酒は池をなし、肉は林をなすほどにたくさんあるの意で言う。『史記・殷本紀』に「酒を好みて淫楽し、婦人をへいす。……大いに楽をあつめ沙丘に戯れ、酒を以て池と為し、肉をけて林と為し、男女をしてして、その間に相わしめ、長夜の飲を為す」とある。殷の最後の王である紂王ちゅうおうの故事に基づく。

出処進退
(しゅっしょしんたい)

 今の役職・地位にとどまるか、それをやめて退くか、という身の処し方をいう。

出藍の誉れ
(しゅつらんのほまれ)

 弟子が師の学識や技量を越えること。

類語: 「青は藍より出でて藍より青し」

朱に交われば赤くなる
(しゅにまじわればあかくなる)

 人は交わる相手によって善人にも悪人にもなるということ。

同意語: 「近朱必赤」
類語: 「水は方円の器に従う」、「蓬に交じる麻」、「麻の中の蓬」

酒嚢飯袋
(しゅのうはんたい)

 大酒を飲み、飯を腹一杯食うだけで何の役にも立たない人のことをあざけって言う。

首尾一貫
(しゅびいっかん)

 方針や態度などが初めから終わりまで変わりなく同じであること。筋が通っていること。

純一無雑
(じゅんいつむざつ)

 不純なものや混じりけのまったくないこと。人物がいちずでうそや邪念のまったくないようす。

春秋に富む
(しゅんじゅうにとむ)

 年が若く、将来がまだたっぷりあることを言う。「春秋」は春と秋の意から転じて、歳月・年齢の意。『史記・曹相国世家』に「天下初めて定まり、棹恵王は春秋に富む」とある。

春秋の筆法
(しゅんじゅうのひっぽう)

 物事を公正に厳しく批判すること。『春秋』は経書の一つで、中国、春秋時代の歴史を書いた書物。魯の史官の記録に基づいて孔子が手を加えたと伝えられ、その手法がいわゆる「春秋の筆法」であるが、それが些事をとりあげて大局に及ぶ論法をとるところから、間接的な関係にある原因と結果を直接的に結び付けて批判することのたとえともする。

春宵一刻直千金
(しゅんしょういっこくあたいせんきん)

 春の夜のひとときは千金にも値する価値があるということ。北宋の蘇軾そしょくの「春夜」詩に「春宵一刻直千金、花に清香有り月に陰有り、歌管楼台声細細、鞦韆しゅうせん院落夜沈沈」とあるのによる。花はよい香りを放ち月はおぼろにかすむ、高殿の歌声や管弦もかぼそくなって、庭ではぶらんこ(鞦韆)で遊ぶ人もなく夜がふける。華やぎの後の静寂が価値あるものとして歌われている。

同意語: 「一刻千金」

春風駘蕩
(しゅんぷうたいとう)

 何事もなく平穏なことや、人の態度や性格がのんびりとしていて温和なことをさす。のどかに吹く春風。

淳風美俗
(じゅんぷうびぞく)

 厚くて素直な人情と、好ましい風俗・習慣。

順風満帆
(じゅんぷうまんぱん)

 追い風に帆をいっぱいにふくらませているように、物事が快調に進むようす。

類語: 「得手に帆を揚ぐ」

春眠暁を覚えず
(しゅんみんあかつきをおぼえず)

 夜が明けたのも知らずに眠ってしまったの意で、春の眠りの心地よいことを言う。

上意下達
(じょういかたつ)

 上の者の意志や命令が下の者に伝わること。

小異を捨てて大同につく
(しょういをすててだいどうにつく)

 わずかな意見の違いにはこだわらず、根本的に重要な一致点を見出してそれに従うこと。「小異」はわずかに違うの意、「大同」はおおもとは同じの意。


で何が何ウェールズへの旅行

類語: 「尺を枉げて尋を直くす」、「小の虫を殺して大の虫を助ける」

城下の盟
(じょうかのめい)

 敵に首都へ攻め入られてから結ぶ講和条約の意で、最も屈辱的な講和を言う。

同意語: 「城下のちかい」

城狐社鼠
(じょうこしゃそ)

 君主のすぐ近くにいて悪巧みをする臣下のこと。城にすむ狐とやしろに巣くう鼠を除こうとすると建物を損なうおそれがあって、容易に手を下しにくいことから言う。

上戸は毒を知らず下戸は薬を知らず
(じょうごはどくをしらずげこはくすりをしらず)

 酒飲みは酒が毒になることを知らずに飲み、下戸は酒が薬の役を果たすことを知らないで飲まずにいるということ。

正直の頭に神宿る
(しょうじきのこうべにかみやどる)

 いつも正直であれば、人には神仏の加護がついてまわるということ。

同意語: 「神は正直の頭に宿る」

正直は一生の宝
(しょうじきはいっしょうのたから)

 幸福は正直から得られるものであるから、正直は一生を通じて大切にしなければならないということ。正直者は人に信頼され、やがてそれがもとになって幸せになるの意から言う。

正直者が馬鹿を見る
(しょうじきものがばかをみる)

 悪賢い者はうまく立ち回って利益を得るのに対し、正直者は損害を被ったりして不利益な思いをすることが多いということ。正直者はごまかしを嫌い規則をよく守るために、かえって不自由な思いをするところから言う。

盛者必衰
(じょうしゃひっすい)

 全盛を誇る者も必ず滅びる運命にあるということ。この世の無常観を言うことば。

生者必滅
(しょうじゃひつめつ)

 命あるものは必ず死滅するということ。この世の無常観を言うことば。

常住不断
(じょうじゅうふだん)

 常に続いて絶えないこと。ずっと続いていること。

生生世世
(しょうじょうせぜ)

 生まれかわり、死にかわりして経験する世。永遠をいう。

霄壤の差
(しょうじょうのさ)

 非常に大きな差異。「霄」は天で、「壤」は地。天と地ほどの差があるということ。

類語: 「雲泥うんでいの差」

小人閑居して不善をなす
(しょうじんかんきょしてふぜんをなす)

 小人物は暇ができると、とかく善くないことをしがちだということ。『大学』にあることば。

類語: 「暇人が悪魔を呼び出す」

正真正銘
(しょうしんしょうめい)

 まったくうそ偽りのないこと。まちがいなく本物であること。

小人罪無し壁を懐いて罪有り
(しょうじんつみなしたまをいだいてつみあり)

 凡人は元来善良で罪のないものであるが、身分不相応な財産を持つと、かえって罪を犯すものであるということ。『春秋左氏伝』による。

小心翼翼
(しょうしんよくよく)

 気が小さくてびくびくしているさま。

上手の手から水が漏れる
(じょうずのてからみずがもれる)

 どんな名人上手と言われる人でも失敗することはるというたとえ。名人がたまたま失敗したときに言う。

同意語: 「巧者の手から水が漏る」
類語: 「猿も木から落ちる」、「河童の川流れ」、「弘法にも筆の誤り」、「千慮の一失」

上手は下手の手本下手は上手の手本
(じょうずはへたのてほんへたはじょうずのてほん)

 下手な者が上手な者を手本にしてまねるのは当然であるが、上手な者もまた下手な者の失敗や不手際などを参考にして上達するものだということ。世阿弥『風姿花伝』に「上手はへたの手本、へたは上手の手本なりとくふうすべし。へたのよき所をとりて、上手のものかずにいるる事、無上至極の理也」とある。

類語: 「負うた子に教えられて浅瀬を渡る」

小智は菩提の妨げ
(しょうちはぼだいのさまたげ)

 小賢しい知恵は、かえって物事を成就するための妨げになるということ。小智がかえって仏果を得ることの妨げとなる意から言う。「菩提」は仏教のことばで、仏果を得て極楽往生すること。

同意語: 「小智は大道の妨げ」
類語: 「なま物知り地獄へ落ちる」、「生兵法は大怪我のもと」

掌中の珠
(しょうちゅうのたま)

 最も大切にしているもののたとえ。特に、最愛の子や妻のたとえ。手の中に持っている玉の意から言う。

少年老い易く学成り難し
(しょうねんおいやすくがくなりがたし)

 月日のたつのはあまりに早くて人はすぐ老人になってしまうが、学問は容易には修め難い。だから、若いときに寸刻を惜しんで勉学に励むようにという教え。朱子の詩「偶成」にある句で、「一寸の光陰軽んずべからず」と後に続く。

類語: 「歳月人を待たず」

少年よ大志を抱け
(しょうねんよたいしをいだけ)

 これから世に出る若者よ、遠大な望みを持って人生の道を進みなさいということ。札幌農学校(現、北海道大学農学部)の校長であったアメリカの科学者ウィリアム・スミス・クラーク博士が、学生との別れに際して述べたということば、"Boys, be ambitious for the attainment of all that a man ought to be.(少年よ、こうあらんと思うすべてのことの達成のために貪欲であれ)"に基づく。

小の虫を殺して大の虫を助ける
(しょうのむしをころしてだいのむしをたすける)

 大事のために小事を犠牲にすること。あまり重要でない一部を犠牲にしても全体を生かす方がよいという教え。

同意語: 「大の虫を生かして小の虫を殺す」
類語: 「小を捨てて大に就く」、「小異を捨てて大同につく」、「寸を枉げて尺を信ぶ」

賞は厚くし罰は薄くすべし
(しょうはあつくしばつはうすくすべし)

 善行・功労に対してはできるだけ厚い褒賞で報い、悪行についてはできるだけ軽い罰にすべきであるということ。『説苑・談叢』に「明君の制は、賞は重きに従い罰は軽きに従う」とあるのに基づく。

同意語: 「罪の重きを軽くし功の浅きを重くせよ」
類語: 「刑の疑わしきは軽くせよ功の疑わしきは重くせよ」、「罪の疑わしきは軽くし功の疑わしきは重くす」

焦眉の急
(しょうびのきゅう)

 今にも眉毛が焦げてしまうほど、火が迫っている危険な状態。非常に自体が切迫していて危険なこと。また、急いで処理しなければならないことのたとえ。

同意語: 「燃眉の急」
類語: 「轍鮒てっぷの急」、「眉毛に火がつく」

勝負は時の運
(しょうぶはときのうん)

 勝負はそのときそのときの運によるもので、力のまさっている者が勝つとは限らないということ。『太平記』に「軍の勝負は時の運によることなれば、あながち恥ならねど……」とあり、勝負は実力よりは運命に左右されるものであるという考えが強い。

同意語: 「勝敗は時の運」
類語: 「勝つも負けるも時の運」、「勝負は兵家の常」

正法に不思議なし
(しょうぽうにふしぎなし)

 正しい教え、宗教には何も不思議なことは起こらない。不思議や奇特があるのは、邪教のあかしだということ。

枝葉末節
(しようまっせつ)

 本質から外れた些細な部分、主要でない物事のたとえ。

証文の出し遅れ
(しょうもんのだしおくれ)

 手遅れになって効力を失うこと。証文を出すべきときを失したために証文が証文として役に立たなくなる意から言う。

同意語: 「支証の出し遅れ」、「証拠の出し遅れ」
類語: 「後の祭り」、「六日の菖蒲あやめ十日の菊」

将を射んと欲すれば先ず馬を射よ
(しょうをいんとほっすればまずうまをいよ)

 大きな目標を達成するためには、対象に直接当たるよりはその周辺にある問題を解決することから始めた方がよいということ。敵の大将を射ようと思うならば、まずその馬を射て、その後で大将の首を射よの意から言う。

同意語: 「将を射んとせば先ず馬を射よ」、「将を得んとせば馬を射よ」、「人を射んと欲すれば先ず馬を射よ」

小を捨てて大に就く
(しょうをすててだいにつく)

 とるに足りない小事は捨てて、より重要なことに力を傾注することを言う。

類語: 「小の虫を殺して大の虫を助ける」

諸行無常
(しょぎょうむじょう)

 仏教の根本思想で、あらゆる物は絶え間なく変遷・流転して常住することがないということ。釈迦入滅時のことばとされ、『景徳伝灯録』に「諸行無常、是生滅法ぜしょうめっぽう生滅滅巳しょうめつめつい寂滅為楽じゃくめついらく」とある。

食言
(しょくげん)

 前に言ったことを実行しないこと。一度言った言葉をまた口に入れる意から、自分の都合などから約束や誓いを破ることを言う。

同意語: 「言を食む」

食指が動く
(しょくしがうごく)

 あることをしたいという気持ちが起こること。「食指」は人差し指の意で、てい公子宋こうしそうという人は、その食指が動くと必ずご馳走にありついたということから、本来はご馳走にありつく前兆があることを言う。『春秋左氏伝・宣公四年』に見える故事。

初志貫徹
(しょしかんてつ)

 初めに思い立った願望や志をくじけずに最後まで貫き通すこと。

女子と小人とは養い難し
(じょしとしょうじんとはやしないがたし)

 女性と小人物はとかく扱いにくいということ。『論語・陽貨』の孔子のことばに「ただ女子と小人とは養い難しと為すなり。これを近づくればすなわち不遜、これを遠ざくれば則ち怨む」とあるのに基づく。

初心忘るべからず
(しょしんわするべからず)

 人は物事を始めたときの真剣な気持ちをいつまでも持っていなければならないということ。世阿弥の『花鏡』に「当流に、万能一徳の一句あり。初心不可忘」とあるように、元来は能楽の心得を言ったもの。

諸説紛紛
(しょせつふんぷん)

 いろいろな学説や意見が入り乱れて定まらないようす。皆が自分の説を正しいと主張しているようす。

蜀犬日に吠ゆ
(しょっけんひにほゆ)

 識見が狭いために疑い深く、すぐれた言行をなす人を怪しんで非難すること。霧深い山中にある蜀の国の犬は、ときたま見える太陽を怪しんでそれに吠えるということから言う。

類語: 「呉牛月に喘ぐ」

白河夜船
(しらかわよふね)

 何が起こっても気づかないほど、ぐっすりと眠り込むことのたとえ。京都の白河のことを聞かれて、川の名と思い「夜船で通ったから知らない」と答えて、京見物をしたという嘘がばれてしまったという故事から。『毛吹草』に見える。

知らざるを知らずとせよ、これ知るなり
(しらざるをしらずとせよ、これしるなり)

 知らないことは知らないとはっきりさせることが、本当に知るということである。『論語・為政』に「これを知るをこれを知ると為し、知らざるを知らずと為す、これ知るなり」とあるのに基づく。孔子が弟子の子路しろの理論偏重を戒めたことば。

知らぬが仏
(しらぬがほとけ)

 知っていればこそ腹も立つが、知らないと仏のように心を動かされないでいられるということ。また、事件の真相を知らず、のんきに構えている人をあざけっても言う。江戸いろはがるたの一つ。

類語: 「見ぬ物清し」、「人生字を識るは憂患の始め」

知らぬ仏より馴染みの鬼
(しらぬほとけよりなじみのおに)

 いくら善人であっても面識のない人よりは、欠点はあっても懇意にしている人の方が頼りになるということ。

知らぬは亭主ばかりなり
(しらぬはていしゅばかりなり)


 近所の人は誰でも知っている妻の浮気を亭主だけは知らないでいるということ。「町内で知らぬは亭主ばかりなり」(雑俳・末摘花すえつむはな)から、亭主の無知をからかって言うことば。当事者だけがうかつにも知らないでいることのたとえにも使う。

白羽の矢が立つ
(しらはのやがたつ)

 多くの中から選び出されること。人身御供ひとみごくうを求める神が意思表示として、択ばれた娘の家の屋根に白羽の矢を立てたという伝説から言う。

同意語: 「白羽が立つ」

尻が据わる
(しりがすわる)

 一か所に落ち着いている。

尻が長い
(しりがながい)

 他家に居候する。

尻が割れる
(しりがわれる)

 隠していた悪事がばれる。

同意語: 「馬脚を露す」

尻食らえ観音
(しりくらえかんのん)

 受けた恩を忘れて、後は知らぬ顔をしていること。事態が好転すると観音様の恩を忘れて、悪口さえも言いかねないの意から言う。

而立
(じりつ)

 ⇒「三十にして立つ」

尻に敷く
(しりにしく)

 妻が夫よりも強い支配力を持つ。

尻に付く
(しりにつく)

 後ろからついていく。配下となる。人のまねをする。

支離滅裂
(しりめつれつ)

 統一なくちりぢりばらばらな状態。まとまりがなくめちゃめちゃ。

思慮分別
(しりょふんべつ)

 いろいろと心を働かせて深く考え、識別し判断を下すこと。また、そういう能力。

尻を捲る
(しりをまくる)

 居直る。

尻を持ち込む
(しりをもちこむ)

 責任者に問題の解決を迫る。

知る者は言わず言う者は知らず
(しるものはいわずいうものはしらず)

 物事を真に知る者はむやみに口に出して言ったりしないが、よく知らない者に限ってべらべらとしゃべるものであるということ。『老子・第五十六章』に基づく。

吝ん坊の柿の種
(しわんぼうのかきのたね)

 度のすぎた吝嗇りんしょく家をののしって言うことば。柿の種まで物惜しみするほどけちだの意から言う。「吝ん坊」はけちの古風な言い方。

同意語: 「けちん坊の柿の種」、「吝ん坊の柿のへた」

詩を作るより田を作れ
(しをつくるよりたをつくれ)

 詩を作る暇があったら田を耕せ。実生活に何の役にも立たない風流なことより、実益のある仕事を優先せよということ。

類語: 「花より団子」、「碁を打つより田を打て」、「粋が身を食う」

心猿意馬
(しんえんいば)

 ⇒「意馬心猿」

心機一転
(しんきいってん)

 あることをきっかけとして、気持ちがすっかり変わること。またそのようにさせること。良い方向、明るい気持ち、積極的な気分に変化させる時に使う。

神機妙算
(しんきみょうさん)

 神が行うような絶妙のはかりごと。常人には思い付かないすぐれたはかりごと。

人口に膾炙す
(じんこうにかいしゃす)

 広く世間に知れ渡ること。また、広くもてはやされること。「膾」(なます)と「炙」(あぶり肉)は、ともに誰の口にもおいしいと感じられることから言う。

沈香も焚かず屁もひらず
(じんこうもたかずへもひらず)

 特にいいこともしなければ悪いこともしないの意で、平々凡々であること。芳香も放たなければ、悪臭も放たないの意から言う。

同意語: 「伽羅きゃらもたかず屁もこかずも」、「線香もたかず屁もひらず」
類語: 「人畜無害」、「毒にも薬にもならない」、「毒にも薬にもならぬ」

深山幽谷
(しんざんゆうこく)

 遠く人里を離れた奥深い山々や、深くひっそりとした谷間。人が足を踏み入れていない静かな自然をいう語。

参差錯落
(しんしさくらく)

 ものが一様でなく、様々なものが入り混じっていること。

仁者は憂えず
(じんしゃはうれえず)

 ⇒「知者は惑わず仁者は憂えず勇者はおそれず」

仁者は山を楽しむ
(じんしゃはやまをたのしむ)

 仁者は万古不動の山の姿に己れを反映してそれを楽しむものだということ。『論語・雍也』の孔子のことばに「知者は水を楽しみ、仁者は山を楽しむ。知者は動にして、仁者は静かなり。知者は楽しみ、仁者は寿いのちながし」とある。「知者は水を楽しむ」の後に続けることも多い。

神出鬼没
(しんしゅつきぼつ)

 非常にすばやく現れたり見えなくなったりすること。不意に出没して居所のわからないこと。

尋常一様
(じんじょういちよう)

 普通で他と変わりないこと。ごくあたりまえであるさま。

信賞必罰
(しんしょうひつばつ)

 功の有った者には必ず賞を与え、罪を犯した者には必ず罰を与える。賞罰を厳格に行うこと。

針小棒大
(しんしょうぼうだい)

 針ほどの小さなものについて棒のように大きく言う。物事をおおげさに言うこと。

類語: 「針ほどのことを棒ほどに言う」

人事を尽くして天命を待つ
(じんじをつくしててんめいをまつ)

 人としてできる限りのことをして、その結果は天命に任せるということ。南宋、胡寅こいんの『読史管見』にある「人事を尽くして天命にまかす」に基づく。

類語: 「天は自ら助くる者を助く」

新進気鋭
(しんしんきえい)

 ある分野において新しく登場して認められ、意気込みや才能が鋭いこと。

信心は徳の余り
(しんじんはとくのあまり)

 信心は生活に余裕があってこそ生まれるものだということ。生活にあくせくしていては信心どころではないといった意味合いで使う。

同意語: 「後生は徳の余り」
類語: 「衣食足りて礼節を知る」

薪水の労
(しんすいのろう)

 炊事の苦労のたとえ。また、骨身を惜しまぬ奉仕のたとえ。たきぎをとったり水をくんだりする労働の意から言う。

人生意気に感ず
(じんせいいきにかんず)

 人間は金銭や名誉のためではなく、人の心意気に感じてそれに報いようとして仕事をするものであるということ。唐の魏徴ぎちょうの詩「述懐」に「人生意気に感ず、功名誰かまた論ぜん」とあるのに基づく。

人生七十古来稀なり
(じんせいしちじゅうこらいまれなし)

 ⇒「古稀こき

人生字を識るは憂患の始め
(じんせいじをしるはゆうかんのはじめ)

 人は文字を覚えたことから苦労が始まるので、かえって無学の方が気楽でよいということ。宋の蘇軾そしょくの詩「石蒼舒せきそうじょの酔墨堂」に「人生字を識るは憂患の始めなり、姓名ほぼ記すれば以てむべし」とあるのに基づく。

類語: 「知らぬが仏」、「聞けば聞き腹」

人跡未踏
(じんせきみとう)

 今までに人が足を踏み入れたことがないこと。人の通ったことが全くないこと。

迅速果断
(じんそくかだん)

 物事をすばやく決断し、実行すること。思いきりがよく決行にすばやい。

進退これ谷まる
(しんたいこれきわまる)

 困り果ててどうすることもできない。前に進むことも後ろに退くこともできない意から言う。『詩経・大雅・桑柔』にある詩句「進退きわまる」に基づく。

身体髪膚
(しんたいはっぷ)

 からだ全体、髪の毛や皮膚に至るまでのこと。

身体髪膚これを父母に受く
(しんたいはっぷこれをふぼにうく)

 我々の体は髪の毛から皮膚に至るまですべて父母から頂いたものだから、損なわないようにしなければならないということ。『孝経』の冒頭に[[身体髪膚これを父母に受く。敢えて毀傷きしょうせざるは、孝の始めなりとあり、自分の体を大事にすることが孝行の第一歩であると説く。

進退両難
(しんたいりょうなん)

 進むも退くも両方ともに困難なこと。ニッチもサッチもいかないこと。

死んだ子の年を数える
(しんだこのとしをかぞえる)

 今となってはどうしようもない過去のことを悔やんだり愚痴を言ったりすることのたとえ。死んだ子が今生きていたら何歳になっていると、死児の年を数えることから言う。

同意語: 「死んだ子の年勘定」、「死児の齢を数える」、「死児の齢を数える」

死んで花実が咲くものか
(しんではなみがさくものか)

 人は死んでしまえば万事おしまいで、生きていればこそよいこともあるということ。枯れた木は花も実もつけないように、人は死んでしまえば何もよいことはないの意から言う。

同意語: 「死んで花実は咲かぬ」、「死んで骨は光るまい」
類語: 「死ぬ者貧乏」

心頭を滅却すれば火もまた涼し
(しんとうをめっきゃくすればひもまたすずし)

 どのような苦痛も精神の持ち方次第で苦痛とは感じなくなるということ。無念無想の境地に至れば火さえも涼しく感じられるという意から言う。「心頭」は、こころ・精神。織田信長が甲斐の恵林寺えりんじを焼き討ちにした際、住僧の快川かいせん禅師が火中に端座して唱えたことばだという。

親は泣き寄り他人は食い寄り
(しんはなきよりたにんはくいより)

 不幸があると肉親縁者は心から哀悼の意を表して集まってくるが、他人は葬儀につきものの食べ物にありつこうとして集まってくるということ。

同意語: 「親の泣き寄り他人の食い寄り」、「親は泣き寄り」、「他人は食い寄り」

心腹の友
(しんぷくのとも)

 心の内をすべてさらけ出して付き合える親友のこと。「心腹しんぷく」は胸と腹。転じて心の内。

類語: 「莫逆ばくぎゃくの友」

深謀遠慮
(しんぼうえんりょ)

 将来のことまでよく考え、計画をたてること。また、そのようなはかりごと。

辛抱する木に金が生る
(しんぼうするきにかねがなる)

 どんな仕事も辛抱する木で励めば、いつの間にかお金がたまっているということ。「木」に「気」をかけて、辛抱が大事なことを説く。

同意語: 「辛抱は金」
類語: 「辛抱は金挽き臼は石」

人面獣心
(じんめんじゅうしん)

 冷酷無情な人や恩義を知らない人をののしって言う語。人の顔をしているが、心は獣同様だの意で言う。

類語: 「人の皮を被る」

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(しんらばんしょう)

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